誕生日を知って会うまで、一生懸命プレゼントを選んだけど、申し訳なさもあいまって、どうしていいかわからなくなっていた。嵐山君の負担になりたくないのに、負担になっているのではないかと不安ばかりが大きくなる。誕生日を教えてくれなかったのは、わたしが会うのはテストが終わってからにしようと言ったからなのかもしれない。だから言いにくくなったのかも。でも、それでも、電話でもいいからおめでとうと当日に伝えたかった。彼女なんだし。もしかして、本当は彼女になれていないのか、なんてネガティブなことも考えてしまう。わたしと付き合い始めたことも、たぶん向こうも公言はしていないだろうから、誕生日を機会に言い寄る女の子だっているかもしれない。付き合うなら他の女の子の方がよかったって、思われたかもしれない。数日前の浮かれていた自分がどこに消えたのかもわからないまま、ずっと気分が落ち込んでいた。
待ち合わせ場所に向かう途中、何度も自信がなくなって、歩くのが遅くなった。会って誕生日のことを謝ってすっきりしたい。これからは、もっとちゃんと、カップルっぽい雰囲気になりたい。でも、そんなことをちゃんと言えるか自信もない。会えばいつも相手のペースで、何も考えたくなかったからそれが心地よかったしそれでよかったけど、これからはちゃんと、向き合って話し合わないといけないんだろう。そう思うと、どんどん気が重くなった。
待ち合わせの場所はわかりやすい場所だった。早めに家は出たけど、結局集合時間ギリギリになってしまった。当然、准はもう待ち合わせの場所にいる。まだ距離があるから向こうは気付いてない。そこに、女の子が近寄るのが見えた。びっくりして隠れるように違う方へ体を向けてしまった。
女の子は二人組で高校生かなって思うけど私服だし、同い年でもわからない。一人は眼鏡の黒髪で地味そうだけどかわいらしい感じで、もう一人は元気がよさそうな茶髪の女の子。茶髪の子とよく話てるみたいだからそっちだけ知り合いなのか、はたまた二人とも知り合いなのか。遠くて何を話してるかはわからないし、途中で割り込んでいく勇気も今のわたしにはない。どうしていいかわからなくて、ため息を吐いた。話してる女の子がどんな関係なのかも聞けなくて、この先うまくやっていく自信がまたしぼんだ。
「!」
名前を呼ばれて振り向けば、准がいた。その後ろにさっきの女の子たちもいる。近くで見ると、もっとかわいい。ファンとかだったら他人の振り、した方がいいんじゃないかと思ってしまう。
「あーあ、本部ではしばらく秘密にしておいた方がいいわよ。絶対悲しむ子がでるから」
「それはあるねー。邪魔しちゃ悪いし私たちはもう行こう」
「そうね。またね、准」
女の子二人組は手を振って去って行った。一体どんな関係性なんだかよくわからない。ただ、下の名前で呼ぶ親しい人なんだな、と、それしか頭に残らなかった。
「待ち合わせの時間なのに人といて悪かった。行こうか」
「ううん。大丈夫」
気を遣って遠くにいたと思ってくれたのだろうか。たんに勇気がなくて、自信がなくて近づけなかっただけなのに。
「さっきの二人は、ボーダーの仲間で、メガネじゃない子が、いとこの桐絵」
「いとこ……」
「あんまり似てないかな?」
「いや、似てると思う」
どおりでかわいいわけだ。ここの一族、きっとみんな美形なんだろうな。そんなどうでもいいことを思っていた。
本当は、歩き始める前に、待ち合わせの場所で謝罪とおめでとうとプレゼントを渡してしまおうと思っていたのに、計画は狂いまくって、今はもう、お昼ご飯のお店に向かっている。お店だと、タイミングとか難しいんだよなあ。どうしようか。