テスト最終日、いつもの女子四人で集まってテストの終了を喜び、夏休みに遊ぶ相談をしようとなった。准はボーダーの予定があるらしい。忙しいのは知っているつもりだったけれど、付き合い始めてからこまめに予定を教えてくれるようになり、驚いた。今までこんなに忙しい中、わたしと会ってくれていたんだと思って嬉しい気持ちにもなったけど、付き合えたのだからもっと会いたいと思ってしまう。仕方ないと割り切るしかないのだけれど。
「あとは単位が無事にとれることを祈るばかり」
「大学生の夏休みって、長いし何したらいいんだか悩むね。部活とかないし」
「今思えば高校の夏休みとか、部活でずっと学校行ってたし、宿題もあったし、こんなに自由じゃなかったよね」
「まっさらですごい解放感。夏休みうれしー! 楽しいことしたい!」
 普段あまり来ないおしゃれなカフェでスイーツを食べながら、これからの毎日に想いを馳せる。バイトもあるけど、その分遊ぶお金もある。
「そんで、二人はどうなったの?」
「嵐山くんと付き合った」
「私はまだ」
 おめでとうとがんばれをもらって、むずがゆい気持ち。でも出会って早々の人たちにも心配かけるほど落ち込んだりして、今思うと申し訳なかった。
「最近学校でも楽しそうだもんね」
「ほんと、ゴールデンウィーク明け呪われそうなレベルで暗かったよね」
「そうそう。出会ったときはいい子っぽかったのに、落差やばくて友達選び失敗したかと思った」
「それは、言いすぎでしょ」
「それくらいやばくてみんなで心配したんだよ」
 みんなやさしくて嬉しい。幸せすぎてごめん。みんなの幸せもわたしはちゃんと祈ってるから、みんなで幸せになりたい。
「あとは生駒くんかー」
「あれどうなの? いけそうなの? ダメなの?」
「いい人だけど友達感強いよね」
「そうかなあ。かっこいいって思うんだけど」
 最近あった生駒くんとのエピソードを聞いてみんなで笑う。面白い人だし、ちょっと格好悪くても幻滅しないこの二人の相性はいいはずなのだけど、一度友達のくくりに収まると、距離を詰めるのは難しいらしい。今すぐどうにかしたいこともないし、今が楽しいからそれでいいんだ、とほほ笑む友人は、実はわたしよりも幸せなのかもしれない。
「そういえばこの前、生駒くんが嵐山くんの誕生日会するんだって張り切ってたけど、はもうその時付き合ってたの?」
「……え? 誕生日っていつ?」
「テスト期間だったんだけど、にじゅうはち?」
「プロフィールくらい調べたら出てくるんじゃない?」
 幸せで浮かれていたはずなのに、どんどん幸せがしぼんで行く。テスト期間前にはもう付き合っていたのに、知らなかった。お祝いもしていないし、おめでとうの言葉すら伝えてない。焦りで、血の気が引いた。
「えーっと、嵐山准、誕生日、七月二十九日。身長百七十九センチ、O型」
「調べたらネットに出てくる彼氏やばー」
「……知らなかった」
「でも自分の誕生日、付き合いたての彼女には言いにくくない? 祝ってくれって言ってるようなもんじゃん。嵐山くんが気を遣ってくれたってことでしょ?」
「それでも調べたらわかるようなことなんだったら、おめでとう言いたかった……どうしよう? どうしたらいいと思う?」
「次いつ会うの?」
「四日後。ボーダーが一日休みなのその日らしくて」
「それまでにプレゼント買わないとじゃない?」
「どうしよう。何がいいんだろう。いくらくらい? あんまり高いと引くよね」
 楽しく夏休みの予定を決めるはずが、動揺を隠せないわたしのせいで、みんなが相談に乗ってくれた。元気になってよかったと言われたばかりなのに、また心配をかけることになってしまった。准へのプレゼントを買う時、みんなにもお菓子とか何か、お礼をしよう。本当に、友人たちには感謝しかない。