暑すぎる。うだるような暑さ、と初めて表現した時代よりもさらに暑くなっているのではないか。猛暑や熱帯夜の基準が当たり前になって行くように、また新しい言葉が作られるのだろうか。だとしても今の暑さを適切に表現する言葉はまだ見つからなくて、急足で本部に向かうものの、運動と認識した身体からは汗が止まらなくなる。こういう時にこそ、換装体のありがたみを感じてしまう。

「あちぃー」
 ラウンジで隊の連中と集まる約束だったがまだ小佐野しかいなかった。エアコンが効いた室内に来てもまだ汗は乾かない。タオルがあっただろうかとかばんを覗くと、彼女の愛用品が入っている。なんかのタイミングで預かってそのままだったらしい。
「ラッキー」
「あ! すわさんいいの持ってるじゃん」
「便利な世の中になったよな」
「それ、高い方のやつじゃない?」
「は?」
 小佐野の言葉がわからないまま、扇風機の風を浴びていると、小佐野も同じ小型扇風機を取り出した。
「おそろい〜」
「まじかよ」
「それかわいいけど高いから悩んでこっちにしたんだよね。諏訪さんリッチ」
「いや俺のじゃねーし」
 スイッチを押して風を強くする。こんなもんと思っていたが、身近な人が使っているとその便利さに気付かされる。便利すぎて自分にも買おうかと思っていたくらいだ。確かに女子高生はみんな持ってるから迂闊に選ぶと誰かと同じになってしまう可能性がある。それを他のやつに見つかったらと思うと面倒だし、使いにくくなるなら買う意味がなくなる。
「あ、諏訪さんイロチ!」
 通りがかりの国近が色違いでこちらも同じく光る加工のされたものだった。多分小佐野が言う高い方のものらしい。
「さすがA級!」
「機能は同じだろ」
「そうだけどかわいい方がテンション上がるじゃん」
 わかる〜と隣で女子高生たちが盛り上がっている。彼女はもう女子高生ではないしこんなノリでこの色を選んではいないと思うが、そうであったらなかなかかわいいところもあるなと思える。
「諏訪さんがJKになったって、風間さんから連絡来たんですけど……」
 少し遅れてきた日佐人が、俺の持ってる扇風機を見てコレか、と苦笑いしながら言った。