高校二年になったすぐくらいから、付き合った彼女と別れた。半年。たったそれだけの期間だったのかと思うと、なんとも言えない切なさが込み上げてくる。大切にしていたつもりだたけど、全然できていなかった。それがわかっているから余計に自己嫌悪におちいる。
気が利く子だなと、感じた時にはもうそれなりの好意があった。いい感じ、と形容はしがたい雰囲気をまとった時、相手も同じような気がして告白して、付き合うことになった。
付き合いは順調だと思っていた。無茶なわがままを言われるようなことはなかったし、ボーダーのことも労わってくれていた。陽介と出水が同じクラスだから、忙しさの理解も容易かったのだろうと思って、特に気にしていなかった。
三か月くらい経った頃から、いつ会ってもなんだか疲れが見えて、楽しそうではなかった。頻繁に会えていたわけではないからたまたまだと思っていたけど、それが続くと不思議だった。本人に聞いてもなんでもないと言われてしまい、そのうち戻るかと安易に考えたのが悪かった。今ではそう思う。
夏が終わって、寒くなってきて、年末年始くらいはゆっくり会えたりするのだろうかと考えていた。まだまだ一緒にいる未来を、想像していた。だけどそんなこと考えていたのは、自分だけだった。
終わりはとてもあっけなくて、別れ話、というほどの大げさなものではなかった。彼女が、もう付き合うのは難しいかもしれないと、こぼした。迷惑かけちゃうから、友達にもどろう、と。友達になんて戻れるわけがないと頭の中で思っていたけど、こんなあっさり繋がりを絶てなくて、わかったと返事をした。
もっと深く理由を追求すべきだった気もしたけど、もう好きじゃないと言われるのが怖くて、聞けなかった。結局自分のことしか見えてなかった。
それからの日々のことはあまり記憶がない。淡々と日常をこなしていたら、あっという間に日が経った。時間が解決してくれる、と思っていたけどそんな気が全くしない日々だった。
俺の様子に見かねた三輪が一度だけ、大丈夫か、と声をかけてくれたのに、それも強がって返事をした。全然、大丈夫なんかじゃなかった。でも正直に話しても、解決するとも思えなかった。正直になって解決するとしたら、相手はだ。
本人に直接連絡をする勇気がなかった。今更何を話せばいいかわからなかったし、どうしているのかさえわからなかったから。でもだからと言って米屋を頼るのもなんか違うと思っていたのだけど、そんなときに、陽介の方から、ずっと触れなかったこの話題に触れてくれた。
「そんなに好きなのに、なんで別れたわけ?」
「どうにもならないことだってあるんだよ」
「は元気そうにしてるけど。すっきり憑き物が落ちた感じ」
「……そうか」
彼女に何か無理をさせていたのだとしたら、原因は俺だし、原因が取り除かれたら元に戻る。当たり前のことだけど、聞かなきゃよかったと後悔した。
「奈良坂だけが悪いとは思ってねーけど、付き合ってからアイツ、ずっとなんか無理してる感じあったけど」
「何もしてねえよ」
「いや、変なことさせてたとか思ってるわけじぇないけど原因? わかんねーといつまでも状況も変わらないんじゃねーの」
「……」
「まあ、聞きにくいか。聞けたら教えてやるよ」
「いいのか」
「世間話くらいはする仲だしな」
そう約束をした一週間後、昼休みに急に陽介から、放課後スタバに来いと、乱暴な連絡がきた。