お題:いつもよりかわいい
ボーダーの予定をしっかりきっかり空けて、初めて、休日を一緒に過ごす。昨日はドキドキしてなかなか寝付けなかったけど、朝はきちんと目が覚めた。
ギラギラと照り付けてくる太陽。おろしたてのスニーカーのつま先がまぶしい。暑い。家を出るの、早すぎたかもしれない。
「辻󠄀くん」
「あれ。早いね」
「楽しみで、早く来ちゃった」
にこにことしている彼女に緊張しそうになる。せっかく慣れたはずなのに、全然慣れてない。
「い、行こう、か……」
「うん!」
いつもと違う彼女はいつもよりかわいい。私服だからだろうか。休みの日だから? デートだからとか、とまで考えて、また緊張してくる。自分だって今日新しい靴を履いているくせに。
「手つないでもいい?」
「え、あ、……うん」
彼女も顔が赤い。暑さのせいだけではないことは、わかる。彼女の首筋の汗が目について、自分の汗も垂れるのに気づく。
「今日、髪型、違う……」
「暑いからって思って……変かな」
「ううん。…………かわいい、と、思う」
「ありがとう」
軽く首を触る彼女をじっと見守ってしまう。普段見えない部分にどきどきする。こんなことで、今日一日一緒に過ごせるのだろうか。大きく息を吸って心臓を落ち着かせようとするけど、難しい。
「辻󠄀くんも今日かっこいいよ」
「え?」
「休みの日だからかな? あ、いや、いつも、かっこいいんだけど」
心臓がもっとうるさくなる。嬉しいけど、よくない。つないだ手にも、汗がどんどん出てしまいそうだ。
「いったん、ごめん」
謝って手を放す。ズボンで手を拭いてから、深呼吸をする。平常心、保てないと、楽しく過ごせない。
「大丈夫?」
「だ、い、じょうぶ」
また彼女は微笑んでくれるけど、いつもよりもかわいくて、結局もうだめだと思った。
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