お題:人生相談


 進路希望の用紙を眺めながら、どうしたもんかと頭を抱える。なんでみんなもう将来やりたいこととかあるんだろう。漠然と、いいなあと思う職業は絞り切れないほどあるけど、自分にどれが向いていて、それになるためにどんな勉強をするかもよくわからない。
 ぐるぐる考えていると、別に進学しなくてもいい気さえしてしまう。私もボーダーとか入ってればよかったのかも。そうしたらボーダー推薦で大学に行けるし、就職もボーダーの仕事とか、何かできるんじゃないかな。

「ねえ、なんて書いたの?」
「ああ? 言うかよ」
「影浦はいいよね。実家もボーダーもあるんだから」
「おめーは俺より頭いいんだからなんでも選べるだろ」
「影浦よりは成績良くても、社会で通用する気がしない」
「喧嘩売ってんのか?」
「売ってない。選択肢があっても選べないから誰かに決めて欲しい」

 面倒になって「三門市立大学」と書いてみるけど、何学部があるのかさえ知らない。近くでいい。でも一人暮らしもしてみたい。そういう肯定と否定を頭の中で繰り返して、私の将来は一体どうなるのかわからない。

「カゲのお好み焼き屋で雇ってよ」
「ちゃんと焼けんのかよ」
「たこ焼きつくるのうまいよ! あ、お持ち帰りでたこ焼き売ろうかな、カゲの店で」
「俺の店じゃねーしやめろ」
「材料ほぼ一緒だしいいアイディアじゃない?」
「なら進学して経営の勉強しろ。話はそれからだ」

 すっごい嫌な顔をしたくせに、私の進路を決めてくれた。お好み焼き屋さんでたこ焼き屋。意味がわからないけど、カゲがいいって言うならやってみたい。ずっと一緒にいれる理由があるのなら、ちょっとくらいそれに縋ってみても許してほしい。

「ありがとう」
「……うるせえ」
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