お題: あざとかわいい


 女の子の扱いがわからなくて苦手だとは思うけど、嫌いというわけではない。だけどこうして女の子を避けるような生活をしていれば、自然と女の子の方も自分を避けて、結局、うまく仲良くなる方法がいつまでもわからない。
 ボーダーだとひゃみさんは普通に話せるし、他の人も時々は、話しかけてくれる。でもやっぱりボーダーよりも、学校の女の子の方がかわいく見えるのは、ないものねだりなのだろうか。それとも最近気になるあの子のせいか。
 席は少し離れているけど、その子が後ろの友達と話すとき、体を横に向けるから、時々目が合いそうになる。合いそう、で済んでるのは自分がすぐにそらすからで、もしそらさなかったら、彼女はどんな顔をしてくれるのだろうかとも気になるけれど、そんな勇気はない。
 そんな日が続いていたら、最近、目が合いそうになると、あろうことか、手を振ってくるようになった。きっとからかわれていると思うのだけど、そんな単純なことでドキドキしている自分がとても恥ずかしい。
 その子が友達に何をしているのかと指摘をされて、「辻󠄀くんかわいいよね」と話しているのを聞いたことがある。確実にからかわれているだけだとわかるのに、わかっていても、抗えない。
 そんなことをしてくる子、今までいなかった。たったこれだけで、なんてバカげていると自分でも思うんだけど、他の子では感じないドキドキを感じてしまう。
 男同士で話していると、たまにかわいい芸能人の話になる。誰がかわいいとか、あの子がいいなんてセンスがないとか、そんな、その時だけの軽い話題。でもその話のあとは、必ずあの子が頭に浮かんでしまう。芸能人なんかよりは全然普通のはずのあの子が、やっぱり一番かわいいとか、思ってしまうなんて、俺はちょっとおかしいのかもしれない。 
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