お題:仕事中
同じクラスのイケメンは、お家が貧乏だとかで、いつだって近所のスーパーで働いている。ボーダーにも所属していて忙しいはずなのに、一体どういう生活をしているのか、謎だ。
「あ、どうも」
「どうも」
品出し中の彼と、ぎこちないあいさつを交わして、通り過ぎようとしたら、ひきとめられた。初めてのことでびっくりしていると、無愛想のまま、それ、と指をさされる。
「入荷しました」
「え?」
「探してなかったっけ?」
指の先を見れば、前に探していた品が並んでいる。でもこれを置いているか聞いた店員さんは別の、主婦の人だったと思うのに。
「ありがとう」
「要望があれば、入荷しますので」
ひとつ手に取ってカゴに入れる。同級生のイケメンは、仕事もできる男なんだなあと感心してしまう。すぐ仕事に戻ると思っていたのに、じっとこちらのカゴを見つめているから、なんだか気まずくなってどうしたの、と声をかけた。
「それ、何に使うのかと思って」
「カレーに入れると美味しいんだって」
テレビでやってたのをお母さんと見て、今度買ってこようと盛り上がったものの、なかなか売っていなかったものだ。きっともうお母さんは忘れているし、次のうちのカレーはいつになるかもわからない。
「へえ、今度入れてみようかな」
「烏丸くん、料理もするの?」
「当番があるから」
「偉いね」
イケメンがこうしてがんばっているのを間近に見てしまえば、応援もしたくなる。自然な感情だと思う。これは、抜け駆けとかじゃない。
「ひとつ、プレゼントするよ」
「いいの?」
「うん。お母さん、買い物のお金多めにくれるし」
「それはミョウジさんが安いの選んでいくからでしょ」
指摘をされて恥ずかしくて赤くなるのがわかる。なんでそんなことまで知っているのだ。烏丸くんに会えるかもという下心で、家の買い物を代わりに来ているのがバレるのも、時間の問題かもしれない。
769字