お題:弱点
「チョコといちご、どっち食べる?」
「両方」
「そういうと思た」
自分の分のチョコレートアイスをひとつ、わたしの分のアイスをふたつ、袋から取り出して見せつけてくる。こんな風に甘やかされていたら、ぶくぶく太ってしまいそうだ。でもそんなわたしのことも、きっとカワイイと言ってくれる気がして、この心地いい彼の元から一生離れることはできないだろう。
「達人くんのせいで太りそう」
「太ってもカワイイで」
「そう言うことじゃないんだけどなあ」
彼はわたしに甘い。わたしが嫌な女だったらどうするんだろうと、時々思う。でも、わたしも彼のことを好きで好きで仕方がないから、そんな酷いことを言ったりしようなんて気持ちは微塵もないので、結局なんの問題もない。
「達人くんが太ったら、わたしは嫌だなあ」
「せやなあ。なまえちゃんにはずっとかっこいいって思ってもらいたいし、俺は太ったらあかんな」
「太ったら健康的にも心配になるし、長生きして欲しいから、太らないで欲しいな」
「……俺もなまえちゃんが太って病気なったりしたら嫌やなあ」
「達人くんと一緒にアイス食べれなくなったら嫌だな」
「……」
「……」
「これ食べたら、散歩でも行こか」
「うん!」
倍くらいに体が膨らんで具合が悪そうにしているところを想像して、一瞬不安になったけどたかがアイスひとつでそんなすぐに太るわけでもない。彼も同じようなことを考えたのかなと思うと笑みがこぼれた。散歩したくらいでどのくらいカロリー消費できるのかなんてよくわからないけど、二人で散歩はたのしみ。
彼の弱点はわたしだと思うけど、わたしの弱点もまた、彼なんだろうなと思う。
676字