お題:男子トーク


「これ、どうしたの?」
「え? ああ、親戚の子が遊びに来た時に貼ってったの」
「ステゴサウルス」
「えー、澄晴こういうのわかるタイプなんだ! さすが男の子」
「辻ちゃんが教えてくれた」


 ラウンジにいる彼女を見つけた時、じっとその彼女を見つめる後輩も一緒に見つけた。おれたちが付き合っているのを知っているはずだし、珍しいなと思って声をかけた。

「あ、犬飼先輩」
「どうかした?」
「……あの、彼女さんのスマホケースにステゴサウルスが」
「え?」
「恐竜好きなんですか?」
「えー、この前までなかったと思うけど」
「そうなんですか」

 少し残念そうな辻ちゃんには悪いけれど、彼女が恐竜好きだなんて聞いたことがない。なんでそんなものがスマホケースに付いてるのか。

「恐竜詳しい女の子とならしゃべれそう?」
「無理です」
「だよね〜」
「犬飼先輩は、彼女が飛行機好きだったら嬉しいですか?」
「うーん、どっちでもいいかな。嫌いだったらちょっと嫌だけど」
「そうですよね。俺も嫌いだったら困ります」

 そんなことを真剣に言う辻ちゃんに、彼女ができる日は果たして来るのだろうか。恐竜を嫌いだと言う女の子はやめた方がいいけど、うちの彼女を好きになるのは困る。そんな心配はないだろうけど。

「なんで恐竜いるのか聞く?」
「いや、いいです。俺そろそろ行きます」

 結局興味があるのは彼女自身ではなくて、恐竜だけなところ、辻ちゃんらしくていいと思う。


「辻ちゃん恐竜好きなんだっけ?」
「そうだよ」
「人形みたいなの持ってるのかな?」

 親戚の子が持っていた恐竜の特徴を説明されるけどわからない。恐竜のことは嫌いじゃないけど、もうほとんど忘れてしまった。ティラノサウルスとか、プテラノドンくらいしかわからない。

「今度、博物館でも行く?」
「詳しくないけど、楽しいかな?」
「行ってみればわかるよきっと」

 たまには少年の気持ちを取り戻すようなデートも楽しいかもしれない。
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