お題:目が離せない


 昔からそうだった。どうしても、放っておくことができなくて、ついつい甘やかしてしまう。周りに呆れられることにも、もう慣れた。それでも彼女を見捨てることなんてできないし、できることなら一生面倒を見てもいいとさえ思う。

「迅! ねえ聞いてよ。今日ほんとムカつくことあって!」
「うん。何でも聞くよ」

 その日にあった嫌なこと、話せば忘れると言うのなら、どんなことだって聞いてあげたい。ずっと、そう思っていた。最後に彼女が笑顔を見せてくれれば、それでおれはいつだって満足した。
 気付いたらチラつくようになった未来。そうならないように、しようと思えば思うほど、濃くなった。どうしたら、彼女を失わない未来にたどり着けるのだろうか。考えても考えても、その可能性がなくなることがなくて、毎日、未来を確認しようと会いに行った。

「迅、最近変だよね。毎日会ってるのに、何かにつけて会いに来るし」
「……そうかな」

 彼女に視える未来を、伝えるか悩んではやめていた。伝えたところで防げることなのかわからないし、彼女を不安にさせることを望んんでなんていない。

「大丈夫だよ!」
「なにが?」
「何か心配してくれてるんでしょ? 何かあっても大丈夫だって。未来のことなんて、わからないのが普通なんだし」
「……」

 それを言われては、何も言えなくなる。未来なんて視えなくていいと思うことは自分だってある。けど、せっかくの能力だ。誰かの役に立つのなら使わない手はない。

「しばらく会わなくても、元気に過ごしてみせるから。連絡はするし、迅だって本当は忙しいでしょ?」
「……そういうところ」
「ん?」
「いや、なんでもない」

 目が離せないんだ、そう素直に言えばよかったかもしれない。でも言えなかった。未来を利用しているようで、振り回されているのは自分の方だった。
743字