お題:また明日


 一日の最後の授業がもうすぐ終わる。今日は掃除もない日だから、すぐに支度をして学校を出よう。そして本屋さんに寄って今日発売の好きな漫画の新刊を買って、コンビニでおやつを買って帰るんだ。残り十分の授業へもう集中力がなくてそわそわしてしまう。
 おやつは何がいいかなーなんて思っていたら、消しゴムを落としてしまって、隣の席の王子くんが拾ってくれた。王子くんはボーダー隊員だから、いない日が時々ある。今日は、ずっといたんだな。
 正直、王子くんのことはあんまり得意じゃない。社交的だし、頭もいいしかっこいい。けどなんか、苦手。なんでかわかんないけど。


「ずいぶん急いでるね」
「え? ああ、うん。そうなんだ」

 授業が終わって、急いでカバンに荷物を詰めていれば声をかけられる。こういう風に、軽い感じで話しかけてくるのはいつものことなのに、慣れずにびっくりしてしまう。こういうところも苦手。

「楽しい予定でもあるの?」
「うん。好きな漫画が発売日なの」
「へえー、なんてやつ?」

 早く帰りたいのに王子くんは呑気に話しかけてくる。知らないと思うと加えてタイトルを言うけど、やっぱり知らなくて、この時間、すごく無駄とか思ってしまう。

「面白いの?」
「うん。おすすめ」
「今度読んでみようかな」

 絶対読まないと思う。と心の中で思うけど口にはしなかった。王子くんのよくわらないところ、苦手。

「わたし急ぐから」
「うん。また明日」
「……また明日」

 軽く手を振り合い、教室を出る。何でもかんでもスマートで、気さくに話しかけてくる。でも悪意があるとかからかってるわけではなくて、よくわからない人。
 数日後、本当におすすめ漫画を読んで「これ面白いね」と言われて、わたしが思うよりも実はいい人なのかもしれない。
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