お題:仕事納め


 クリスマスが終わり、街は一斉に新年を迎える準備を始める。切り替えの早さに驚くこともないのは、毎年同じことの繰り返しだから。今日も無事に一日が終わる。

「仕事納めはいつなの?」
「強いて言えば、昨日かな」
「ぜんぜん意味わからない」

 ボーダーに仕事納めの概念なんてない。ネイバーに年末年始休みなど存在しないし、何か起きれば駆り出される。今日は何も起きないだろうと言う予測で一日オフにしたが、明日から年明けまでは待機と言うところだ。隊員以外は普通に休みをとるが、暇な連中は本部で適当に過ごしているだろうから、何か起こってもまあなんとかなるが。

「まあ、平和ならずっと休みだからね」
「平和ならもう年明けるまでお休みなの?」
「そうだね」

 早く教えてよって、にこにこする彼女はかわいい。期待させてしまっては申し訳なくて言えなかったのだけど、もう年内はおれの出番はなさそうだ。

「初詣一緒に行けるかな?」
「んーそれはどうだろう?」
「またそれ」

 彼女はおれのサイドエフェクトを知らない。ボーダーの人間じゃない彼女に「未来が視える」などと言っても信じてくれるとも思えない。願わくば、何も知らず無邪気なままでいて欲しい。

「明日も会える?」
「会えるって言うか、明日まで一緒にいられるけど」
「え? そうなの?」
「ダメ?」
「嬉しい!」

 今夜も一緒に過ごして、明日一緒にお参りに行く姿が視える。神に頼らなくても、回避できることはたくさんあるけれど、彼女が行きたいのなら付き合ってあげよう。

「……明日、初詣行けないなら、神社にお参り、一緒に行きたいな」
「うん。いいよ」
「本当に!? あのね、悠一がいつも無事でいられるように、神様にお願いしておきたいんだ」

 かわいくて仕方なくて、抱きしめたい気持ちをグッと堪えて、代わりに繋いだ手に力を込めた。また彼女は照れ臭そうに笑って、楽しみ、とつぶやいた。
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