お題:楽しいクリスマス


 やることがないのも寂しいからどうせならば、任務にでも行きたかった。でもそんな願い虚しく、今日は暇になってしまった。どうせ同じく暇しているだろう諏訪に連絡をしてみたら、昨日から徹夜で麻雀をしていたせいで、今日は飲みに行く気分じゃないなんて言われた。風間も今日は任務があるらしいし、暇を持て余しているのは自分くらいだ。
 大学の友達を誘おうにも、相手がいる子はデートだし、予定がないとわかっていた子はみんなバイトに行った。どうせ任務だと思い込んでた自分が憎い。
 今日の今日じゃ何かおいしいものを食べようと思っても、どこも混んでいるだろうな。せっかく時間があるのに何もできなくてもどかしい。大学からの帰り道、寄り道をしようと街中を歩いていたけど、なんだか雰囲気に圧倒されてしまって疲れた。別にクリスマスに対して特にこれといった感情は持ち合わせていなかったけれど、今日はすこしだけさみしい。やることがないって、不幸だなあ。家に帰って適当なご飯を作って、楽しそうなテレビでも見るか。

「おう。今帰りか?」
「うわ、酷い顔」
「んなことねーだろ」

 買い出しのためスーパーへ向かおうと方向転換した時、諏訪が現れた。大学も来ないでこんな時間まで本部にいたのだろう。寝起きのようなぼさぼさの頭と煙草の臭い。

「暇なのかよ」
「そうだね。買い出しして帰ろうって思ったところ」
「なら飲みにでも行くかー」
「えー二日酔いは? てかお店混んでない?」
「さすがにもう平気だわ。安いチェーンなら空いてるだろ。こんな日だし」

 どうせ男と飲みに行くなら、もう少しまともな格好してる男とがよかったなあなんて贅沢を思う。この寒いのにサンダルとか信じられない。でもすこしだけ気持ちが報われた。

「居酒屋でケーキ食べれるかな」
「お前ケーキ好きじゃねえだろ」
「よく知ってるじゃん」

 楽しいクリスマスのキラキラにあてられて、自分を見失うところだった。元からクリスマスとかが似合う女じゃなかったし、寝ぐせ頭の諏訪と飲むくらいがちょうどいい。
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