お題:きみを持ってる
寒空の下、公園のブランコに揺られる。こんな時間にこんなことをしているおバカは私くらいだろう。ドラマや映画ではよくあるシチュエーションかもしれないけど、あれは実際にこんなに寒いわけではないはずだ。こんなことなら、お父さんのダウンコートでも借りてくるんだった。彼氏に会うからと、おしゃれコートで来たことを後悔した。
明日は雪かもしれない。天気予報でお姉さんが言っていた。でも、この辺は降らないだろうなんてたかを括っていたが、もしかするともしかするかもしれない。このまま雪が降ってきて、雪に埋もれてしまったらどうしよう。彼は探して見つけ出してくれるだろうか。
「ごめん。遅くなった」
「雪が降る前に来てくれてよかった」
「今日雪なの?」
待ち合わせに現れた鋼くんに安心をする。冷え切った身体が少しだけ元気になった気がした。
「明日って言ってたけど、寒いから雪降ってきたらどうしようかと思って」
「寒い中待たせてごめん」
申し訳なさそうに呟く彼に、ブランコを飛び降りて勢いよく抱きつく。こうしたらもう寒さなんてどこかへ言ってしまう。冷え切って痛いと感じていたほおも、じんわりと体温が上昇して、溶けそう。
「会えて嬉しい」
「オレも」
ボーダー隊員の鋼くんは、学校以外でなかなか会える時間がとれない。そもそも三門市に来たのもボーダーに入るためだし、鋼くんがボーダーに入らなかったら出会えていないわけで、ボーダーには助けてもらったりしているし感謝しているけれど、もう少し、彼女と会うくらいの時間を与えてくれてもいいんじゃないか、なんて時々思ったりする。ボーダーがんばる鋼くんももちろん好きなんだけど。
「ココアでも買おうか」
「もうちょっとくっついてたら、寒くなくなるよ」
「こんなに冷たいのに」
そう言ってぎゅっと両手をにぎられる。鋼くんの手は、いつだってあたたかいと思う。すき。ドキドキしてきた。鋼くんはいつだって簡単に私をしあわせにさせる。私には待つことくらいしかできないけど、それを喜んでくれてたらいいな。
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