お題:あなたの嫌いなところ


 本当は賢いくせに、とぼけているところ。なんで、って聞いたこともある。でもそれもはぐらかされた。別に頭がいいのを隠したって隠さなくたって、いまさら私たちの関係は変わることもないのに、適当に返事をされたそれがすごくむかついて、賢いのが垣間見えるたびに、むかついている。

「今日は、何に怒っとるん」
「頭いいんだから自分で考えて」
「いや頭良くても、人の頭ん中まではわからんやろ」
「……むかつく」

 のらりくらり。いつもこういう態度でいられると、すごく不安になる。私って、彼にとってどんな存在なんだろう。大切にされているとは思う。でも、それが計算され尽くしたもので、今を適当に楽しく過ごすための行動だったらとか、考え始めたらキリがない。本心が知りたいだけなのに。
 敏志側の手はコートのポケットに入っていた。それなのに、無理矢理手を入れてぎゅっと握られる。コートのポケット、パツパツ。

「ポケットとれちゃう」
「だって、手、いつも出しといてくれんやん」
「寒いもん」

 繋いだまま取り出された手は寒くない。敏志の手、大きくて私の手なんてすっぽりおおわれてしまうし、いつもあったかい。

「……嫌やった?」
「いややないです」

 私の勝手な感情なんてもう、どうでもいい。こうして触れられただけで、悩みなんてすぐにどこかに行ってしまう。たとえ計算だとしても、敏志も私のことすごい好きじゃん、そう思えるからどうでもよくなってしまう。むかくつところも嫌いなところも全部、本当は好き。
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