お題:○○しないと出られない部屋


 太刀川と二人きり。扉は鍵が掛かっていて出ることは出来ない。この状況、一体どのくらい続くのだろう。気が重い。
 時をさかのぼること三十分。明日提出期限を迎えるレポートをしていないことが、風間さんにばれた。正直もうこの授業は訳がわからないので、捨てるつもりだった。ちゃんと卒業するための単位は計算済みだ。 それなりに余裕も持たせていたからこの授業一つ落としたところで進級にだって影響もない。なのに、一緒に受けていた太刀川が、さぼりにさぼり、このレポートを落とすとやばいと言うことが発覚。同じ授業をとっていたのだから一緒にやるようにと風間さんに言い渡され、こうして二人で会議室に閉じ込められた。鍵は風間さんが持っていて、レポートが終わったら電話しろと指示をされた。こんなのありか。そんなこと言うなら風間さんが見てあげればいいのに。なんで私が。

「このレポート、何書けばいいんだ?」
「知らない。私も最近授業聞いてないし」
「あーあ、閉じ込められ損か。腹減った」

 手元に資料がないのにどうやってレポートをしろと言うんだろうか。風間さんも本当に人が悪い。一応持っている教科書をパラパラとめくるが、さっぱりわからない。

「私はいいけど、太刀川はまじでやばくない?」
「やべーけど何もわかんねーし」

 何の生産性もない話で時間はどんどん無駄になる。本当にずっと出してもらえなかったらどうしよう。お腹へって死ぬし、そのうちトイレとか行きたくなるし。

「女と二人っきりで閉じ込められてんのに、全然興奮しねーわ」
「同感」
「……もしも無事にレポート出せたら二人で飯行く?」
「おごって」
「色気ねーな」

 誘い文句を言った時の太刀川が少しだけかっこよく見えて、怖くてごまかした。こんなところで、こんな状況で、ときめきはいらない。
 どうしたもんかと頭を抱えていたら、風間さんからメールが届いた。誰かが書いた去年のレポート。参考にしろ、とのこと。やさしい。太刀川なんかより、風間さんのほうが好き。そう言い聞かせて、真面目にレポートをやることにした。

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