お題:全部お酒のせい
大学の友人たちと飲んだ後、本部に戻るために歩いていた。暑い季節が終わって、外を歩きやすい季節になったなと思っていたら、もうすっかり寒くなってきた。これは次からは外じゃなくて誰かの家で鍋だな。そんなことをぼんやり思いながら、ふらつく足を一生懸命動かして部屋がある本部へと向かう。太刀川に一緒に帰ろうと言ったのだけど、このあと男たちだけで飲み明かすらしい。いいなとちょっとだけ思うけど、明日に引きずりたくもないので一人帰ってきた。
連絡通路を使えばよかったと思うけど、今更戻るのは面倒くさい。目の前に見える巨大な建物を目指して歩くのは簡単でよかった。
「なにしてんすか?」
「あ、迅じゃん! 珍しい。こっちにいるなんてレア」
「おれだって本部にはちょくちょく顔出してますよ」
本部へはもう少しでたどり着けるところだった。何でこんなところで会えたのか、そんなの考えてもわからないから、考えない。久しぶりに会えた迅を、いつもよりかわいく思えて不思議だ。触られる前に、そう思って迅のおしりを触った。
「男の子のおしりだ~」
「そりゃ男の子ですから」
「そうだったそうだった」
「すげー飲んできたんすね」
「うん。でも太刀川はまだ飲むって友達の家行ったー」
「こんな夜道、ひとりで危ないでしょう」
「三門市はボーダーがあるから安全安心なんです!」
「それネイバーに対してだけね」
迅と話すのは楽しい。本部で話しているとすぐ人が集まるから、ふたりきりで話をしているの、すごおく久しぶりな気がする。 そう考えたら、嬉しくなって、首に腕を伸ばし抱き着く。
「どうしたんですか、急に」
「どうせ未来知ってたんでしょー」
「まあ、選択肢の一つには」
そう言って迅はわたしのおしりを触った。別に減るもんでもないしいいか、と思ってしまうのも、相手が迅だからだと思う。
「もう疲れたから本部まで連れてって」
「レイジさんじゃないから無理」
たった一年。されど一年。彼はまだお酒を飲めなくて、わたしはこんなに酔っ払いで。年上なんだからこっちがしっかりしなきゃダメだって思うけど、もうそんな細かいこと考えられない。だっていま、すごくふわふわした気分だし。迅だって、未来を知ってて、ここに来たんでしょう。
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