お題:「雨」「体温」
机や床が湿気を吸っているのか、雨の日の教室は、なんとなく重たい気がする。いつもは明るい光を取り込む窓も、雨の日は役目を果たせないで、どこか悲しそうだ。
カーディガンを持ってくればよかった。ここ最近は秋の日差しになる日も多かったが、雨の日は決まって蒸し暑く、結局不要になるからと持ってこなかったが、そういう日に限って寒さを感じたりする。 うまくいかないようにできてる。そう思い込むしか、納得する方法など存在していないと思う。
「待たせちゃったね」
「大丈夫だよ。平気だった?」
会長が教室に戻ってくると、教室内の空気が少し心地よくなる。それはわたしの体温少しが上がったからなのか、ただ単に、雨が少し弱まったおかげかはわからない。
「うん。あっちはもう平気」
勉強を教えてもらってた途中、生徒会で困ったことが起きたらしく呼びにきた後輩を手伝いに少し席を外していた。その間にやっていた問題をすでに解き終えたわたしは待ちぼうけだったけど、その時間もすべて愛おしいから、いくらでも待てると思っていた。
「続き、再開しようか」
「うん」
前の席に腰掛けて、手元に教科書を広げる会長は絵になる。大人びた横顔は、永遠に眺めていられる。わたしはこの人が好きだと改めて思って、またその気持ちを心の奥にしまった。
生徒会副会長の綾辻ちゃんと付き合っていると言う噂は、結局ウソだったけれど、二人以上に似合う組み合わせを、わたしは知らない。二人がうまくいけばいいと言う人だっていた。それを知って、気持ちを打ち明ける気にもならず、こうして仲の良いクラスメイトのポジションをフル活用して近くにいることにした。
いつか気持ちが我慢できなくなるその日まで、この気持ちはじっとしまっておく。窓についた水滴のように、重くなってしたたり落ちるまでは、そこでじっと耐えようと決めた。ペンを握る会長の指の先まで、好きだと思っても。
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