歩きながら、夏休みの話題を出してみる。忘れられているかもしれないデートの約束も聞いた。たぶん柄にもなく浮かれていた。自分は知らな水上の知り合いに、彼女と認識されたことが、実はとっても嬉しかった。第三者にそう認識されると、実感も倍増する。
「焦らんでも夏休みは逃げへん」
「でもちゃんと計画しないとあっという間に終わるでしょ」
「それはそうやけどな」
「ボーダー忙しそうだし、先約入れておかないと」
「任務以外に決まってる予定なんてないけど」
「私が楽しみにしておきたいの」
 そう素直に言ってみたのに、水上はふーんと相変わらずの相槌を打った。自分ひとりで意識して恥ずかしがっていたけど、こんなことなら我慢せずに言っておけばよかった。どうせ水上は何も思ってないんだし、こういう反応ならば恥ずかしく思うこともない。
 突然手がぶつかる。びっくりして水上を見上げる頃にはもう手を握られていて、状況に頭がついてこない。
「……なに?」
「カワイイこと言うなあ思て」
「そんなことないでしょ」
「あるで」
 ぎゅっと力を込められて恥ずかしさでいっぱいになる。こんなことをされては、何も考えられなくなってしまう。
「今日も暑いなあ」
「そうだね」
「ジュースでも飲んでく?」
「うん」
 今日はボーダーに行かないのか聞けば、特に予定はないらしい。今日会った隊の人たちは待ってたりしないのか聞いたけど、勝手にさせときって冷たいことをいう。
 繋いだままの手が、熱いのに離せなくて、水上も同じだったらいいなと、願った。