図書館で、真面目に勉強を進めた。ただそれだけ。けれど、はたから見たら自分たちはきちんとカップルだろうし、休日にわざわざこうして一緒に過ごしているそれが特別なことなわけで。
まだ、俺がアイツを好きだと思っているのだろうか。もしもそれがこの微妙な距離感を保つ理由だとしたら、無理にこちらから何かをしても仕方がないような気がする。こちらはせっかく付き合ってるのだから、距離を縮めたいとは思っている。でも、それをが受け止めてくれないと言うなら、もう俺にできることはない気もする。
それなりにいい彼氏になる自信はある。でも、そこに自分の感情が乗っているかと言うとよくわからない。その内、情もわいてきて離れ難くはなりそうだが。
「……腹減らんの?」
「減った」
「いつまでやるん?」
自分はとっくに飽きてしまっていたのに、彼女は集中を切らすことなく机に向かっていた。しびれを切らせて声をかければ腹は空いたと言う。ならはよ言えや。
「……この問題終わったら、一旦終わりにする」
顔を上げずに言うにため息をついてから、自分の荷物を片付ける。何を食べるか、あまり考えていなかったけど、どうしようか。また勉強を再開するのであれば、ファミレスとかに行った方が手っ取り早いとは思っていたけど、また図書館に戻る気なのだろうか。
「お、わった~」
「おつかれさん」
「ありがとう」
「とりあえず、出よか」
どこへ行くかは決めていないけど、ここでうだうだ話をしているわけにもいかない。手早く荷物をまとめるを眺めながら、伸びをした。
扉を抜けると湿気臭い。まだ雨が降っているので当然なのだが、空調のおかげか館内はもっとさらっとしていた。
「どこ行こっか」
傘立てから、派手な色の傘を抜き取りながらが言った。自分のビニール傘を探すのが面倒になって、傘はないことにした。
「まだ勉強するん?」
「あ、聞きたいところある。教えてほしい」
「ほんなら飯もファミレスとかがええやろ。そのまま再開できるし」
「水上は、持ってきたのもう終わってるんじゃないの?」
「まだちょい残っとる」
「そっか」
傘を広げて一歩進もうとするに近づく。どうしたと言う顔をするので、傘入れて、と言えば見る見るうちに顔が赤くなった。その様子に笑いそうになるが堪えて傘を受け取ろうと手を伸ばした。
「来るときの傘は?!」
「なくなってん」
「探してもないのに!」
「いや、分かりやすく端っこに置いておいたんやけどないねん。ビニ傘やし誰か持ってったんやろ、たぶん」
「……」
「持つから貸し」
やっと手を放してくれて、自分が入れる高さに傘を持ち上げる。怒っているように見せかけて、照れ隠しか。赤くなっている耳を見て、カワイイと思う。置いてきた傘一本分の価値はあっただろう。